この文章には結論がありません。僕はこの文章を一度も振り返らずに書き切ることにしました。理由は、やはり、面倒だからです。
恋愛はコスパが悪い。気持ち悪い。意味が分からない。
恋愛なんて、コスパが悪くて気持ち悪くて、する意味が分からないんですよ。
だってよく考えてみてください。
よく知らん他人と知り合って数日、数ヶ月で意味不明な感情をぶつけ合い、それで何かを悟ったかのような気になって、そのまた数日、数ヶ月後には赤の他人に戻るんです。
こんなことをする意味が本当に分からない。
非合理極まりない行動じゃないですか。
人の一生というのは、永遠ではないんですよ。
人は死ぬんです。毎日が生きるか死ぬかの50/50なわけです。そんな1日を訳の分からない人間と何かをわかったような気になって終えるってあまりにも虚しいというか、もはや生まれてきた意味なんてないに等しいと思うんですけど。
愛が何たるかを思考しない者に愛が分かるはずもなく
大抵、人は愛に関する教育を受けずに大人になります。
だから人々が口にする愛だの、恋だのはすべて出鱈目です。
通常抱かない感情を言葉にする表現力、或いは、また語彙力がないからそれを愛だの、恋だのと呼んでいるだけです。そうして、その大抵の本質は、欲情や情動に帰結する訳です。
だから彼らの関係は呆気なく終わりを迎えるんです。
もう一度言いますが、こんな恋愛ほどコスパが悪くて気持ち悪くて、それでいて意味不明な行為は他にありますか。いやないです。
例えるなら、近所の公園にいる鳩に名前を付けて、セブンプレミアム「金の食パン」を買い与えるようなものです。
つまり無駄なんです。
無駄。
不要不急。
でも、ところで不要不急な愛ってありますかね。
プラトンは「愛に触れると誰もが詩人になる」と言いました。
詩人。やはり恋愛をしている時は人は詩人になる訳ですから、或いは、また、現代ならドラマの主人公になる訳です。ですから、当人からすれば、不要不急な愛なんて存在しないということになります。
なぜなら、その愛がなければそのドラマは進展しないわけですから。
そうは言ってもやっぱり、その恋や愛は表現力の欠陥が産んだただの欲情なんですよね。
人の世界に渦巻く恋愛という感情、概念は、愚かな人が勘違いして生み出してしまった負の遺産なのかもしれません。
じゃあ今僕が抱いているこの感情はなんなんでしょう。
なんなんでしょうね。
僕は文学部です。読んだ本の量でいえば、日本人の平均の軽く5倍はあるはずです。
多くの言葉を知っています。買い被るつもりはありませんが、表現力に関しても、人並み以上にあるはずです。ところが、そんな僕がなぜこの感情に対して適切な名前を付けられないのでしょうか。
情動、性欲、依存、支配、所有、憧憬、尊敬、同情、友愛。
どれをとっても何かズレているような感じがします。
というか、何か足りないんです。
何が足りないのか、こう漠然とした、不安とも言えるような、だけど不安ではなく、かと言って希望のような明るいものではない。じゃあ何かと言われても、やはり適切な言葉が見つからない。
え、恋?
これが恋なのか?
あんなにも批判していた恋をしちゃってるわけ?まじで気持ち悪い。
恋の何がめんどうって、もう全てよ、結局。
仮にこれが恋だとして、何がめんどうだというのか。
まず君が僕をどう思っているかが分からない。これが面倒臭い。
次に、この意味不明な感情を言葉にした時の君の返事を聞きたくない。これも面倒臭い。
最後に、仮にどうにかなって恋愛関係になったとして、失いたくない。これも面倒臭い。
つまり、恋愛というのはやはり面倒くさいんです。
じゃあやっぱりこんな感情は気の迷いだと思って、いつものように惰性の恋愛ごっこにでも精を出そうかしら。そうして、誰と待ち合わせをしても結局、目の前に現れたら良いと思ってしまうのは君。
誰がプラトンを読んで、ゲーテの詩に心を打たれて、ドビュッシーに感動しますか。
なんで君はこういった偉人と比肩するような人ではないはずなのに、僕の感情を揺さぶるのでしょう。
そうしてなぜ僕は、君のことを考えると馬鹿になってしまうんでしょう。
こんな駄文を書くほどに。
こんな駄文は小学生の頃に受賞したなんたら作文賞に提出した文章よりも稚拙で、やはり馬鹿っぽい。
果たしてこれは本当に恋なんでしょうか。
ただ言えることは、なぜでしょう。恋しいのです。
「コヒシイ」のです。
今すぐにでも家を飛び出て、もうタクシーに乗ってでも会いに行きたいのです。そうしなければ、この感情のむかつきをどうすることも出来ないんです。
誰にも読まれたくないものです
この文章は誰にも読まれたくないものです。
恐らくは、僕が書いた文章の中で最も意味が不明瞭で、かつ気持ちの悪いものでしょう。
だから恋は気持ち悪いものだというんです。
こんな文章を僕に書かせておいて、知らん顔なんてしないでほしい。
もう駄目です。
恋しくて死にそうなんです。