『風立ちぬ』は日本屈指の名作【宮崎駿と原作に敬意を込めて徹底考察】

FILMS & DRAMA
風立ちぬは名作と騒がれていた割になんだかよくわからん映画だったな・・・

意味が分かれば面白いのか?あれはいったいなんの映画なんだ?

こんな人に読んでほしい
  • 宮崎駿ファン
  • 風立ちぬが未だに解せぬ
  • 感動する映画を見たい
  • まさに芸術!と言われる作品に触れて感受性を高めたい

今回はこのような方に向けた記事になります。

ちなみに、僕が最初に風立ちぬを見たのは18歳くらいの頃だったと記憶しています。当時は今この記事を書いているほどにはこの名作を読み解くことが出来ていませんでした。

「戦争映画?」

「小説のアニメ化?」

「なんか切ないんだけど、これは、んー?」

とこの名作に対して約7年間消化不良を起こしていました。そしてつい先日、やっと日本に帰国したこともありTSUTAYAで風立ちぬを借りて見てみました。

やっぱり精神的な熟成って大切ですね。この『風立ちぬ』が名作と言われる所以が鮮明に見てとれました。今だからこそ言います。風立ちぬは間違いなく本当に日本屈指の名作です。

では、徹底的に考察していきます。2020年の今、風立ちぬを見たい方はぜひこのブログを読んだ後に見てみてほしいです。

風立ちぬがよくわからない人は情報を収集しようとしすぎ

まず18歳当時の僕もそうだったんですが、普通の映画って主人公の周りで巻き起こるいろいろな出来事、他のキャラクターとの関係がかなり重要になってきますよね。

ただこの「風立ちぬ」は実はそうではないです。

まずここが多くの人が

よくわからない映画だ・・・

と思ってしまう理由です。

というのもこの映画は、ただ単純に堀越二郎という飛行機技師の夢を追う姿だけを切り取った映画だということです。途中ストーリーに幅を持たせるためにいろいろな登場人物が出てきますね。

ちょっとここで主要なキャラクターをご紹介しますね。

  • 堀越二郎
  • 里見菜穂子(二郎の妻)
  • 本庄(二郎の同期)
  • 黒川(二郎の上司)
  • カストルプ(別荘のドイツ人)
  • 里見(菜穂子の父)
  • 二郎の母
  • 堀越加代(二郎の妹)
  • 服部(課長)
  • 黒川夫人
  • カプローニ(イタリアの航空技術者)

めっちゃ雑な言い方をします。誤解を恐れずに言えば、別に必要ないんです。彼らは。

もちろん必要ですよ、映画としての幅を出すためには。ただストーリーとしては、彼らは不要なんです。そして、時代は関東大震災から第二次世界大戦へと向かう過渡期が舞台となっています。

正直、この時代背景もぶっちゃけ不要なんです。

要は堀越二郎という人物がたまたまこの動乱の時代の人間だったというだけのことです。

その証拠に宮崎駿監督は公式サイトで以下のようにコメントしています。

この映画は戦争を糾弾しようというものではない。ゼロ戦の優秀さで日本の若者を鼓舞しようというものでもない。本当は民間機を作りたかったなどとかばう心算もない。

自分の夢に忠実にまっすぐ進んだ人物を描きたいのである。夢は狂気をはらむ、その毒もかくしてはならない。美しすぎるものへの憬れは、人生の罠でもある

宮崎駿

つまりこの風立ちぬという映画は、普通の映画のようにストーリーやキャラクター、時代背景などを多面的に見ていくと結論、「よくわからない映画」になります。

ただ、ただ一点、堀越二郎の夢に突き動かされる狂気にのみフォーカスして見ると、その他の条件さえも鮮やかに見えてくる作品なのです。

この見せ方は、本当に天才。名作。

本当に感動しました。

風立ちぬが伝えたいこと、伝えんとしたこととは?


『風立ちぬ』が伝えんとしたことは、夢の実現は破壊をも含蓄するもの」だということだと思います。

つまり二郎は、ひたすら美しい飛行機を作ることを夢見ていました。

そして彼は、その夢だけを追い続けました。

その結果、彼の作りたかった飛行機は人を殺す殺戮兵器と化したのです。

時代の悪戯か、それとも普遍的な世の常なのか。それは分かりません。

この映画の最後に彼はカプローニと夢の中で、このような会話をします。

カプローニ「これが君のゼロか。美しいな。」

二郎「一機も戻ってきませんでした。」

ここに1人の人間が夢を追うことの狂気、それから当時の世界に翻弄された1人の青年の人生が描かれているのだと思います。

ちなみにその夢の中で、カプローニ、二郎、菜穂子でこのようなやり取りがあります。

カプローニ「(菜穂子は)ここで君が来るのをずっと待っていた。」

菜穂子「あなた、生きて」

菜穂子「生きて…」

二郎「ありがとう。ありがとう。」

カプローニ「君は生きねばならん。その前にちょっと寄って行かないか。いいワインがあるんだ。」

ここで宮崎駿監督は、「生きる」ということを力強く訴えているように感じました。

例え夢を追い、その夢が人を殺そうとも、命ある限りは生きなければならぬ。そのような、力強さ。果たして二郎の夢の実現が罪だったのかは分かりません。

しかしそれでも、「生きねば」というメッセージを僕は感じとることが出来ました。


風立ちぬに反戦の意図は込められているのか?


僕はそれは邪推だと思います。

冒頭でも言ったように、この映画は堀越二郎という人間を主眼にした映画です。それ以外のファクターには意味はないように感ぜられます。

反戦の意図があるなら、もっと別の部分にフォーカスしていたはずですし、少なくとも、堀越二郎の夢の実現についてもっと皮肉混じりに描いたはずです。

だから僕は個人的にはこの『風立ちぬ』からは反戦のメッセージは受け取れませんでした。

風立ちぬの意味と「いざ生きめやも」とは?

「風立ちぬ」の「ぬ」は完了を表す「ぬ」です。

ちなみに、動詞「立つ」の活用は以下の通りです。

  • 未然 – 立た
  • 連用 – 立ち
  • 終止 – 立つ
  • 連体 – 立つ
  • 已然 – 立て
  • 命令 – 立て

連用+「ぬ」なので風が立った。

ちなみにこの立つは起こるという意味です。なので風が起こった。風が吹いた。などという意味になります。

いざ生きめやもの意味


風立ちぬの原作堀辰雄氏の小説「風立ちぬ」の冒頭には

Le vent se lève, il faut tenter de vivre

海辺の墓地 – ポール・ヴァレリー

このようなエピローグがあります。これを訳すところ、「風立ちぬ、いざ生きめやも」となるそうです。

生きめやもは「生き+む(推量の助動詞)」+やも(助詞「や」と詠嘆の「も」)で、直訳すると「死んでもいい」という意味になります。

「風が立った、もう死んでもいいよ。」

という意味になります。

つまり実は「風が立った、生きねば。」は誤訳であるというわけです。

まあとは言え、日本語的には「生きねば」の方が良いですし、映画を見た感じも「生きねば」という意味合いの方が強かったのでそちらを採用することにしたいですね。

打ち消しの「ぬ」

ちなみに打ち消しの「ぬ」の場合、風立たぬになります。

風が起きないという意味になりますので、意味としては真逆になります。古文懐かしいですね。

風立ちぬの名セリフ【美しいところだけ】

さて、古文のつまらないお話はもうやめにして、風立ちぬのグッとぐる名セリフをまとめていきます。

僕らは今、一日一日をとても大切に生きているんだよ

二郎

どうして、この国はこんなに貧乏なのだろう

本庄

俺たちは武器商人じゃない いい飛行機をつくりたいだけだ

本庄

美しいところだけ、好きな人に見てもらったのね

黒川夫人

飛行機は美しい夢だ。設計家は夢に形を与えるのだ

カプローニ

空を飛びたいという人類の夢は、呪われた夢でもある。ヒコーキは殺戮と破壊の道具になる宿命を背負っているのだ

カプローニ

美しいところだけ、好きな人に見てもらったのね


ちなみに堀辰雄の原作「風立ちぬ」が最初に刊行されたのは、1936年。第二次世界大戦が始まったのが1939年のことです。ですから、この原作と映画にはいくつかの違いがあります。

ただこの妻、菜穂子が死ぬシーンは原作から踏襲しています。

僕もこの原作は映画より先に読んでいました。

二郎と菜穂子の関係は原作とほとんど同じように進行していましたが、原作の「私」を宮崎駿監督が飛行機技師の堀越二郎に変えたということですね。

ちなみに原作も映画同様、「名作」と謳われています。三島由紀夫もこれを名作と評したそうです。

ぜひ読んでみてください。ちなみにそれ以外のおすすめの小説はこちらの記事でも紹介しています。»読書嫌いにおすすめする短編小説3選【僕は17歳で初めて本を読んだ】


この「美しいところだけ、好きな人に見てもらったのね」というのは実に時代を感じる態度ですよね。

どうでしょう。

現代にも通用するんでしょうか。この考えは。

ひたすらに潮らしい女性です。同時に、まことに寂しい史実でもあります。


風立ちぬの主人公「堀越二郎」はクズ説


果たしてクズなのでしょうか?

時代的に確かに、結核患者がいる場所で喫煙するのはどうかと思われて仕方ないと思います。ただ価値観も情報も当時と今ではだいぶ違いますよね。

現代の価値観でしか物事をみられない人っていうのはいささかもったいない生き方なのではないかと思いますよ。或いは、菜穂子を1人にさせたという部分。

これもある種の風情ではないですか?

ある種の敬意だとも思うのです。

愛する人に死際を見せたくないという女性心をリスペクトした結果ではないかとも思うんです。この点について彼をクズだというのは、教養以前にあまりに想像力が欠如していますよ。人の心を推し量る能力皆無です。

よって僕は特別、彼がクズだとは思いません。

感想:完璧な日本映画。人生の虚しさ美しさが全て詰まった名作

さて長くなってしまいました。

最後に僕の感想を述べて終わります。

完璧な日本映画。人生の虚しさ美しさが全て詰まった名作

これに尽きます。

改めて年を重ねて見て、すっごい映画だと思いました。すっごい心にずっしりと来る、見応えのある映画。他のジブリ作品とは一線を画す作品です。もちろんその他の日本映画とも一線を画しています。

日本映画のTOP5に間違いなく入ると思います。

個人的には

  1. ALWAYS三丁目の夕日
  2. 続・ALWAYS三丁目の夕日
  3. 風立ちぬ
  4. ALWAYS三丁目の夕日’64
  5. 未定

くらいの名作です。

終わりです。

動画配信は一切なし

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